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クリエイティブ分科会 活動報告詳細
2018年6月22日 第13回クリエイティブ分科会(無料セミナー)開催
「坂崎千春さんの創作レシピ」
場所:日本経済広告社 大会議室
テーマ 「坂崎千春さんの創作レシピ」
内容 セミナー

一般社団法人キャラクターブランド・ライセンス協会(以下CBLA)は2018年6月22日
Suicaのペンギンでおなじみのトップクリエイター坂崎千春さんをお迎えし、セミナーを開催した。
坂崎さんは独立から20周年、ご自身の著書『いきものとイラスト』が出版されたということもあり、会場ではサイン入り著書の即売会も実施され、坂崎さんのファンをはじめ、イラストレーターやライセンスビジネスに関わる人々で賑わった。

【クリエイタープロフィール】

坂崎千春/さかざきちはる
絵本作家・イラストレーター。千葉県生まれ。
東京藝術大学美術学部デザイン科を卒業後、ステーショナリーメーカーのデザイナーとして勤務。1998年よりフリーランスイラストレーターとして活動。
「Suicaのペンギン」(JR東日本)や「チーバくん」(千葉県)などのキャラクター、『ペンギンゴコロ』(文溪堂)などの絵本、書籍や雑誌の装画など幅広い活動を行う。2018年4月に活動20周年の記念本『いきものとイラスト』を出版。

ー「千春」の「千」は千葉から来ていると伺いました(笑) そうなんです。生まれも育ちも千葉で、30歳頃まで千葉に住んでいました。
子供の頃から本が本当に好きで、図書館に入り浸る感じの子供でしたね。
藝大のデザイン科で基本的なグラフィックデザインを学んで、3年生からも本好きが高じて迷わず平面デザインを選択、卒業後ステーショナリーメーカーで働き始めました。
主に大人向けの紙モノ、カレンダーやカード、レターセットなどをデザインしたり、そこに添える絵を描いたりして、印刷や製版なども一通り勉強させてもらった感じです。
ただ自分の絵は当時からどちらかというとサンリオとか、ピングーとか、子供に好かれるような可愛いテイストにはふりきれなかったんですよね。
満足はしてたんですが、綺麗なものしか書けないのもそれはそれでちょっとつまらなくて。
そんな頃、新潮社さんから私がデザインした便箋の絵柄を本の表紙に使いたいと打診をいただきました。もともと本が好きだったのがあり、本の絵ならやりたい、と思ったんですね。そういう仕事をこの先、やっていきたいなと。 会社も独立しても仕事を回してくれるということでしたので、6年半そこで務めた後、ちょうど20年前にフリーランスになりました。
ーとはいえいきなり絵本作家になるというのは難しかったのでは?
独立してからは雑誌のカットや本の挿絵などの仕事が主でした。
独立1ヶ月後のタイミングで友達からグループ展に参加しないかとお誘いがあって、その時に大学時代から自分の中で温めていた『ペンギンゴコロ』という創作絵本を自費出版で出したんです。
子供の頃からペンギンが好きで、当時、世の中にあるペンギンのイラストは何で可愛くないのかなってずっと思ってたので、もうはじめからペンギン一択で(笑)
それがギャラリー巡りをしていた出版社の方の目にとまって、うちで出版しないかと言われまして。
次の年の春に出版され、絵本作家としてデビューという感じでした。

最初のSuicaペンギンはくちばしが黒だった。「立体の制作物は今もくちばしは黒でやらせてもらっていますが、平面印刷物は白だったりと媒体や形状によって違いがあります」

ーラッキーというか、才能というか、もうめちゃくちゃ順調じゃないですか。。。
それから年に一冊『ペンギンスタイル』『ペンギンジャンプ』というペンギンの本を出したんですけど、ちょうど3年目の2000年、本を見た広告代理店の方から「JRが発売するICカードのプレゼン用にペンギンのイラストを描ける人を探している」と連絡があったのがSuicaペンギンに繋がっていきます。
ーなんと…!
Suicaペンギンの最初は「SuicaというICカードにチャージしてね!」というキャンペーンポスターのキャラクターでした。
それが始まってみたら「Suica=ペンギン」という感じで消費者の方に認知が広がったというものもあり、そのまま継続してのキャラクター契約となりました。
契約内容も初年度は「ポスターのイラスト制作費」という形式だったのですが、それ以降は買取にはせず年間契約料と都度ごとの制作費という体系になっています。
ーたしかに「キャラクターを育てていく」という目線で考えると描き下ろしの追加など随時増やしていく必要もありますし、買取ではなく、作り手と使用者が良好な関係を続けてくというのが、ひいてはキャラクターの成長にもつながりWin-Winの関係になる、ということなんですよね。
そう思います。中でも面白かったのは広告代理店さんとのやり取りの中で、自分では思いもよらぬような依頼があるということですね。刺激的というか。「ジャージとチャージを掛けて、ジャージを着たペンギンを描いてください」なんて 自分では絶対思いつかないですもん(笑)
また、Suicaペンギンは起用当初より正面画がより丸く象徴的になっていきました。それはクライアントにこうしろと言われた、というよりは、共に変化していったという印象です。
まん丸のマークペンギンになってからは、結果としてより認知度もあがった思いますし、まさに一緒に育ててきたという感じですね。

ー「チーバくん」も坂崎さんの代表的なキャラクターかと思います。
チーバくんは今や千葉県のキャラクターですが、もともとは2010年の千葉国体のキャラクターとして「千葉出身のイラストレーターにお願いしたい」とコンペにお声がけいただいたのがきっかけです。
ー坂崎さんでも一般のコンペに参加するんですね(驚)
実際、指名でキャラクター依頼されると結構構えちゃうんですけど、コンペだったんでむしろ気楽な感じでいけてよかったです(笑)
国体のキャラクターだけあって「いろんな運動ができて動けるキャラであること」というのが条件にあって、いろいろと調べてみると県の鳥をモチーフにしたようなキャラクターが国体には結構多いんですね。でもそれじゃあ、面白くないなと思って。 千葉県の形をそのままキャラにしたらどうだろうと思ったんです。
シンプルで正統派のなかに「飛び出てる浦安はベロにしよう」とか、チャーミングな要素を入れたんですけど、出来上がった瞬間に、これ決まるんじゃないかという予感がありました(笑)。
最終的にはスタイルガイドも含め、400体(!)くらいバリエーションを作ったんですが、チーバくんは「シルエットが千葉」がベースなので真横か真正面しか使わない、フラットな展開でのデザインを心がけました。
ーそれが最終的には千葉県のキャラクターになりました。
そうですね、県民の方々から愛着もあるし可愛いから残して欲しいという要望を多くいただけたということで正式に譲渡されることになりました。ちょうど今年で誕生10周年なんです。
実は立体にする時が結構大変で、横向きのキャラクターなので横顔から正面への転換が自分の中では新しい試みだったのと今後新しくキャラクターを作るときは、初めから立体を意識することが大事だなと勉強になりました(笑)

こういったアイディアは打ち合わせの帰りに歩いている時など、机に向かわないときにふわりと浮かんだりすることが多いそう

ーなるほど、代表的なキャラクターの制作についてお伺いしてきましたが、息の長いキャラクターを生み出す秘訣とは何なのでしょうか?
時代や流行が変わっても揺るがないキャラを作る、ということですかね。シンプルなのにパワーがあったりだとか、いい意味で中庸で尖りすぎていない感じなのも大切でキャラっぽくしすぎず、サイン的な役割も担えるようなキャラクターが結果として長く愛してもらえているのかなと思います。あと自分の場合は一貫してシンプルであること、そのなかでもちょっとしたフックになるようなチャーミングな部分があると個性が際立つかなと思っています。
ーその点でいくと今回発売となった『いきものとイラスト』の中に、いきものを描くためのこだわりや基本の形などまとめていらっしゃいますがこういうことはもともと自分の中にあったのでしょうか?
実はこれ、後付けといえば後付けなんですが(笑)。
本を書くにあたり、自分はどうやってキャラクターを作っているのかな、というのを改めて自分の中で整理してみたら見えてきたことでもありました。
「単純化の法則」というのは基本の形を洋ナシ型、マッシュルーム型、ピーナッツ型などシンプルな方に置き換えてはどうかという提案でもあるのですが、キャラクターデザインというのはここが基本となると思うので、シンプルでフラットなキャラクターはどうやったら完成するのかというのを体系化してみました。
ーそれって企業秘密みたいな感じでは?
あはは、そうかもしれませんね(笑)。
でも、個性ってその先の真似できない部分に宿ってくると思っているので。
「いきものを描く3つのこだわり」は参考にしてもらえれば嬉しいです。
ー権利を譲渡しないことでキャラクターを育てるというアドバイスがあったと思います。
最後に1点伺いたいのですが、キャラクターを育てるために大切なことは?

契約関係の他でキャラクターを育てるという側面でいくと、担当するアートディレクターとの相性もあるかなと思いますね。そういうのが合致しているものほど、長い目で見たときも上手くいきやすい印象があります。
あとは作品を守るために何でもかんでもNG!とかではなく、クライアントからの要望も比較的柔軟に対応できる、というのもそういった関係性を築いていく上では大事かなと思います。

「いきものとイラスト」出版にあたっては、ファイル名を適当につけて保存していたり、場合によってはMOに保存していたりとともかく昔のデータを引っ張り出してくるのが本当に大変だったそう。 とはいえ、今ではなかなか見ることのできない貴重ま作品が惜しみなく収められた、20年間の集大成となる一冊であり、キャラクター好きな人には大きな癒しを与えてくれる一冊でもあるので、気になる方はぜひ手にとってみてほしい。

いきものとイラスト - キャラクターデザインから本づくりまで。
ビー・エヌ・エヌ新社 2018/4/24 坂崎千春 (著)